2011年3月11日東北地方太平洋沖地震

地球を周回する長周期表面波の記録

北海道大学 大学院理学研究院 自然史科学部門
地球惑星ダイナミクス分野
グローバル地震学研究室 吉澤 和範



2011年3月11日に発生したマグニチュード9.0の超巨大地震は,東北地方を中心に,東日本の広範な地域に甚大な被害を及ぼす結果となりました.犠牲になられた方々のご冥福をお祈りするとともに,被災された皆様,ご遺族の皆様,関係の皆様に心からお見舞い申し上げます.

この地震は,本格的な地震観測が始まって以来,国内最大規模,世界でも4番目という規模の超巨大地震でした.日本のみならず,世界中に展開されている地震観測網において,この巨大地震の記録が観測されています.

世界各地の広帯域地震観測網の記録を詳細に解析すると,この地震により発生した地震波(長周期表面波)が,地球を7周以上していた様子が見えてきます.以下,この観測記録のまとめを報告します.

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 2004年スマトラ島沖地震で発生した地球周回表面波の記録


 下図は今回,Global Seismographic Networkを中心として,世界各地に展開されている地震観測網によって捉えられた地球を周回する表面波の記録です.表面波の一種であるレイリー波の鉛直成分の記録を示しています.

 世界各地の観測点で記録された地震波形のうち,長い距離を伝播しうる長周期の波(3−5mHzの周波数帯域のエアリー相)に着目すると,6周以上周回する表面波が明瞭に確認できます.拡大して詳細に調べると,7周以上の波も見えてきます.

 図の縦軸が震源からの距離(角距離)で,距離毎に地震波形を並べています.上側が震源に近く,下側は震源に対して地球の裏側(対蹠点)になります.

(各波群には,その伝播経路に応じて"R1, R2, R3, R4, ...."という名称がつきます.表面波の伝播の仕方や,エアリー相などの解析方法の詳細については,2004年スマトラ沖地震の解析結果のページを参照ください)

: 地球を周回する表面波(レイリー波).縦軸は震源からの角距離(角距離1度は約111km).横軸は地震発生時刻を基準とした時間(単位は秒).図の上段は地震発生時刻から28時間後までの記録,下段は4時間後から28時間後までの記録で振幅を5倍に拡大.周波数3-5mHz(周期200〜330秒)のバンドパスフィルターを適用.

謝辞:今回用いた地震波形記録は,IRISデータセンターより配布されている GSN(Global Seismographic Network)及びGEOSCOPEのデータを利用しました.

最終更新日:2011年3月26日
作成日:2011年3月25日

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