札幌平岸ガス爆発による空振の地震計記録(序報)

北海道大学大学院理学研究院・地震学研究室 吉澤和範

 

2018年12月16日夜に札幌市で発生したガス爆発事故によって,被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げます.

【概要】
2018年12月16日午後8時半頃に発生した札幌市豊平区平岸でのガス爆発による空振と思われる震動の記録が,石狩低地帯の地表付近に設置された複数の地震計で記録されました.特に,北大キャンパス内の地学実験室に設置された地震計(N114観測点)と,石狩北部の聚富(しっぷ)(気象庁)の2つの観測点で,明瞭なパルスが確認できます.伝播速度は気温0度の音速(約331m/s)で説明可能です.このシグナルを爆発による音波/インフラサウンドに起因する震動と仮定すると,爆発発生時刻は20時29分17秒頃と推定されます.

さらに,爆発地点から60km以上離れた厚真観測点でも,空振(音波/インフラサウンド)の推定到達時刻に明瞭なパルスがみられます.この厚真観測点では,他の原因によるパルス振動も頻繁に現れているため,この爆発によるシグナルであるかどうかは,この観測記録だけからは確定しにくいですが,本爆発によるシグナルである可能性が考えられます.(なおここは,2018年9月6日の胆振東部地震で,震度7を記録した観測地点です)

現時点で,空振に関連する明瞭なパルスの見えた観測地点は石狩低地帯の数点に限られています.北大キャンパス内の観測点は,教育目的のために,建物1階の床に置かれた簡易観測点であり,空振による振動を記録しやすい状況にあります.気象庁の2観測点についても地表面に設置された観測点です.札幌市内とその周辺のボアホール・観測壕内等,地下に設置された地震計では,石狩平野内の観測点であっても,この空振は記録されていません.また,この爆発によるP波(地中を伝わった地震波)は,今回確認したすべての観測点において記録されていません.

なお,本爆発の数分前に三陸沖にてM4.0の自然地震が発生しており,その地震波の記録が,道内各地の地震観測点で記録されています.本爆発のシグナルと紛らわしいので,解析時には注意を要します(観測点によっては,爆発の約1-2分前に,この地震のS波が見えます).ただし,自然地震によって発生した波の走時や周波数成分は,空振によるものとは明らかに異なるため,比較的容易に区別することが可能です.

 

※以下に示す波形はすべて20時25分を基準時刻とした経過時間.

図1:震央距離毎の波形記録(上下成分:ハイパスフィルター10Hz).上から,北大,石狩市聚富(気象庁),厚真町(気象庁)の観測記録.




図2:観測点分布
▲:図1の観測点位置(北から順に,SHIPPU(JMA), N114(北大実験室),ATSUMA(JMA))
○:爆心(札幌市豊平区平岸3条8丁目)



図3:スペクトログラム(縦軸は周波数:0-50Hz,横軸は時間(秒))
※波形はすべて20時25分を基準時刻とした経過時間.

北大構内(全学地学実験室):275秒付近のパルス



石狩・聚富(しっぷ)(JMA):337秒付近



厚真(JMA):450秒付近





【謝辞】
本解析には,気象庁,防災科学技術研究所,北海道大学地震火山研究観測センター,北海道大学高等教育推進機構・地学実験室による地震波形記録を利用させて頂きました.また,東大地震研究所・西田究准教授,気象研究所・小木曽仁氏から有益なご助言を頂きました.記して感謝いたします.